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サイレンを聞く [記事]

このところ、こうきは毎日早起きをしていました。
いつも仕事に行く時は、7時起きでも間に合うのに、6時半にはパッと
飛び起きてきます。そして、いそいそと着替えをし、外へ。線路と国道を
跨ぐ陸橋の上が目的の場所です。
「朝の7じにサイレン鳴る。夜の8じにサイレン鳴る」
いつから知ったのか、朝と夜、決まった時間になると、サイレンの音を
聞きに表に出るようになりました。
「毎月15日、サイレン鳴る」
「9月は、11日と12日と13日と14日と15日、サイレン鳴る」
「3月は、1日と2日と3日と4日と5日と6日と7日と8日と9日と
15日、鳴る!」
こちらは全く知らなかったのですが、どうやら防災サイレンが一年のうち
決まった日に鳴ることになっていて、こうきはそれを事細かに把握している
ようなのです。
「どうしてわかるの?」尋ねると、
「わかる。知ってる!」と自信ありありです。
寄宿舎に入っていた頃、朝夕それを楽しみに窓辺で聞いていたらしく、
その記憶が鮮明に残っていたのでしょう。こうきの特性として、日時と曜日
の記憶に長けており、何年何月何曜日に何があったのか、ということは、
しっかり頭に刻み込まれるようなのです。

 それにしても、陸橋の上でどんなふうにサイレンを聞いているのか、近所
とはいえ、夜に出ていくのは心配です。車にぶつからないように、蛍光テー
プを腕に巻いて行かせていますが、何か変わった行動をして不審者と思われ
たらいけない、という別の心配も頭をよぎります。ある時、一緒に見に行く
ことにしました。
 夜、7時50分を過ぎると、もうソワソワして外へ。いそいそと走り出す
ので、
「ゆっくりだよ。ちゃんと信号機を見て渡るんだよ」などと声を掛けます。
 陸橋の上まで歩いて来ると、冷たい風が地上より強く吹いているように
感じます。一面に眺望が開け、遠くまで街明かりが見えます。
やがて、ウー、カン、ン、カンカン、とサイレン音とともに、いっせいに
あちこちの消防の半鐘が鳴り始めました。四方を見渡すと、あちらこちらで
火の見やぐらの赤い灯が点滅します。
ウー、カンカン、ウー、カンカンカン、
サイレン音は、風と共に暗い夜空に響き渡ります。こうきは自分用の古い
スマホを持って、その様子を一心に撮影していました。数分の間、それは
鳴り続き、そして止みました。
いっせいにまわりの世界が動き、押し寄せ、そしてぴたりと終わる。その
光景を目にし、なるほど、と思いました。こうきがこれを楽しみにしている
理由が、少しわかるような気がしました。

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