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ワゴンRにさよなら [記事]

 今年に入って、車の調子がおかしくなりました。
こうきが小さい頃からずっと乗っていた軽自動車です。
 少し変な音がすると思ったら、急に加速ができない状態になってしまい、
見てもらうと大がかりな修理が必要だと言われてしまいました。
 買ってから年数も経っているし、仕方なく買い替えをすることに。
こうき、いつも乗っている車が戻ってこないことがとても気になる様子です。
 「 ワゴンRは、しゅうり中ですか」
 「いつ、しゅうりしますか」
何度も聞いてきます。
 「あのね、ワゴンRは動かなくなっちゃったから、新しい車を買うかもしれ
ないんだよ」
説明しても、納得いかないようで、
 「ワゴンR、しゅうりできないですか。もう乗らないですか」
 「2月はしゅうりできますか。3月になったらしゅうりできますか」
などと言ってきます。
 しばらくの間、別の車に乗っていましたが、いよいよ新しい車が来ることに
なったので、そのことをこうきに伝えました。
 「新しい車、3月に来ますか。4月来ますか」
 「いやいや、もっと早く来るからね。楽しみだね」
と新しい車を喜んでくれるものとばかり思っていました。
ところが・・・
 「新しい車きたら、ワゴンRとさよならですか」
 「そうだね。もう少しで、さよならかな」
 「ワゴンR、もう、乗らないですか」
 「そうだね」
 何度かこの会話が繰り返されました。
 
 新しい車の受け取りの日。こうきも一緒に行く時間ができました。
ぴかぴかの車の中をのぞいてみて、嬉しげな様子もあったのですが、
ワゴンRから荷物を積み替え、新しい車で帰ってきてみると、
 「ワゴンRは、もうおわかれですか」とこうき。
 「そうね、お別れだったね。お世話になったね」
 「さよならするの、わすれちゃった。さよなら、したい」
 もう一度、ディーラーに行く用事があったので、こうきも連れて行きました。
そして、水色のワゴンRの元へ。.
小さい頃から12年間乗っていた車。保育園も養護学校も、どこへ行くにも
乗っていた車です。いろんなことが、ありました。
 「じゃあ、ワゴンRにさよならさせてもらおうか」
 すると、こうき、車のボディをポンポン、と何度もなでて「さよなら~」とつぶ
やきます。そのあと、運転席に乗り込み、ハンドルを握って運転気分。
 「おせわになりました~」
助手席にも乗って、名残惜しそうに、しばらく車の中を眺めていました。
「すみません」と言うと、ディーラーの店員さんも、にこにこしながら、「いい
ですよ」と待っていてくれました。

 「ワゴンR、しゅうりできませんか」
 こうき、ディーラーのお兄さんにもう一度聞きます。
 「そうですね。修理は難しいかもしれませんね。修理しても直らなかったら、
もう乗れないですね」
 「もう、しゅうりできませんか。しゅうりできなかったら、ゴミですか」
こうきはワゴンRが捨てられてしまうことを心配しているようでした。
 「部品を外して使うことがあるかもしれないし、もしかしたら、このまま売って、
修理して乗る人がいるかもしれません」
 「まだ動くかもしれないんだって。人が乗るかもしれないって」
その言葉を聞いて、こうきは安心したようでした。

 「ワゴンRにさよならしました」
 「12年間おせわになりました」
 「本当にお世話になったね。さよならできて、よかったね」
 こうきのおかげで、長年乗った車のことをいとおしみ、感謝する時間が持て
ました。


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