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最後の卒業式 [記事]

 養護学校高等部の卒業式がありました。
 新型コロナウイルスの影響で、式ができるかどうか心配していましたが、
一週間ほど前に学校からお知らせが来て実施とわかり、ほっと一安心。
 たださすがに、在校生や全ての先生方に見送られての卒業式は叶いません
でした。小学部、中学部、高等部で完全に時間をずらし、卒業生と保護者
のみの参加。式はクラスごとに教室で、できるだけ短縮して行う、という
ことになりました。
 
 当日、こうきはお正月に買ったスーツ姿です。177cmの背の高さに
スーツを着ると、なんだかとても大人びて見えました。
 昇降口前に集まった卒業生たち。男子は凛々しいスーツ姿、女子は華やか
でかわいらしい袴姿で、見違えるようです。思い思いに写真を撮ったあと、
こうきはいつものように、昇降口からロビーを小走りし、階段を駆け上がる
ようにして教室へ。親は近くの控室で待機です。
 控室では、高等部三年間の写真がプロジェクターに映し出されました。
それを見ているうちに、いろいろなことがよみがえってきて、じんわり熱い
ものがこみ上げます。
 その間、子どもたちは、クラスで式の練習や最後の一人一言発表などを行
ない、やがて、式が始まるという呼び出しがありました。
 親は教室まで移動し、廊下から教室の中の子どもたちの様子を見るという
形です。
 教室の廊下の窓は外され、開放的で中が見えやすいようになっていました。
教室の壁には、クラス8人全員と担任の先生方の似顔絵があちこちに貼られ、
手作りのあたたかな雰囲気がありました。そこからは、先生方の心遣いが伝わ
ってきました。

 やがて、校長先生が卒業証書を持ってやってきました。
 教室で一人一人に手渡していきます。
 こうきも、名前が呼ばれると、「はい!」と大きな声で返事し、堂々と証書を
受け取りました。
 証書の授与が終わると、校長先生から卒業生へのビデオメッセージが流されま
した。今回の「特別な卒業式」についてのお話と未来への励ましの言葉でした。
 そして、担任の先生方からも最後の言葉がありました。みんな背筋を伸ばして
真剣に先生の話を聞いていました。最後に、子どもたちと保護者から先生への
お礼の記念品を渡し、クラス全員で写真を撮ってそのまま終了となりました。
 練習していた呼びかけや歌はなくなり、30分ほどの短い式で少しあっけない
感じがしたけれど、今の状況では、卒業式ができ、子どもたちの晴れ姿が見られ
ただけでも、ありがたいことでした。

 校舎を出て、先生たちが列を作って見送ってくださる中を歩き、帰途についた
とき、強烈に寂しさがこみ上げました。
 こうきもこれで卒業か・・・。
 小学部入学から、十二年間も通った養護学校。
 本当にいろいろなことがありました。
 小学部の頃は教室にいられずに、すぐロビーに飛び出していたなあ。
 様々な活動も、落ち着かなくて最後まで参加することができなかったのが、今で
は嘘のようです。
 悩んだり、涙を流したり、普通の子に比べたら、人一倍大変で手がかかり、でも、
人一倍喜びも大きかった十二年間でした。
 難しいことはたくさんあったけれど、よくここまで成長してくれた。
 伸び伸びと楽しく過ごせた養護学校での日々。積み重ねてきた時間のおかげです。
 これまで、こうきに関わってくれた全ての先生方に、心から感謝をしたいと思い
ます。

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突然のおわかれ [記事]

 養護学校での最後の参観日の前日のことでした。
 夕方のニュースを見ていると、突然、新型コロナウイルス対策で
全国の小中高、特別支援学校の臨時休校を要請、という速報が流れ
ました。
 「え~っ」と思わず声が出たのは母。
 「やったー!」と顔が輝いたのは、高校生の妹。
 こうきは寄宿舎に入っていたので、様子がわからず。
 驚きました。本当に、全国一斉に休校になんてなってしまうのか。
 期間は来週から春休みの始まるまでの二週間だということで、
そうしたら、こうきの残りの学校生活は終わりになってしまうじゃ
ないか。
 モヤモヤした気持ちのまま、翌日の参観日に行くことになりました。

 本当なら、朝からクラス参観、学年や地区PTAの会、卒業生の親の
奉仕活動などが組まれていたのですが、全て中止。午後の音楽学芸会
だけの参観となりました。
 様々な音楽に合わせた歌とダンス。最後のステージで、どの子も
生き生きと楽しそうに体を動かしている姿を見て、なんだか胸が
いっぱいになりました。
 こうきは、南中ソーランのグループでした。こうきにとっては
難しい踊りでしたが、一生懸命ほかの子と同じ動きをしようと頑張
っていました。こうきなりの精一杯の踊りを目に焼きつけ、拍手を
送りました。

 学芸会は短縮されて終わり、先生たちはどこか慌ただしく動き回
っていました。休校のことを尋ねても、まだ最終決定がされていな
いとのことでした。
 帰りの会が始まったところで、突然、校内放送が入り、校長先生の
声が響きました。
 「みなさん知っている通り、今新型コロナウイルスという病気が
流行しています。とても残念ですが、みなさんの健康を守るために、
来週から春休みまで、学校はお休みになります」
 そんな内容の話を、校長先生は子どもたちにわかるように、ゆっくりと
丁寧に説明してくれました。
 でも、ここから卒業までの二週間、最後の学校生活を楽しもうとして
いた子どもたちです。
 最後のお出かけとなる校外学習や、クラスでの食事会や、お別れ会など、
全てがなくなってしまいました。別れを惜しむ間もなく、突然、学校が
終わってしまうことに、悲しくて悲しくて、涙が止まらない女の子も
いました。
 こうきはさて、どうだろう?
 昔からこだわりが強く、突然の予定の変更にはなかなか対応できず、
混乱してしまうことがよくありました。学校や寄宿舎が大好きなので、
今の事態を受け入れることが難しいのでは、と心配でした。
 校長先生のお話のあと、担任の先生たちからも、お話がありました。
 「突然のことで、先生たちも何と言ったらいいかわかりません。学校が
これでお休みになって、残りの学校生活がおしまいになってしまうことは
本当に悲しいです。でも、みんなの健康を守るために、きちんとお休み
することが大事です」
 「みんな、コロナウイルスがうつらないよう、しっかりと手洗いや
うがいをして、なるべく家で過ごしてください」
 先生たちも、ただそう言うしかないという様子でした。
 すると、こうき、すかさず手を挙げて、
 「ハイ、家でテレビを見てすごします!」
 しんみりした空気を破るように、大きな声で宣言です。
 意外にあっさりと切り替えができているんだな。
 少し安心しました。

 あれから一週間。
 休みになった子どもたちの行き先として、放課後デイサービスで
日中の預かりをしてくれるというのはありがたいことでした。
 養護学校でも、共働き家庭などに対しては、昼間の受け入れをし
てくれるという話がありました。食事はお弁当になりますが、寄宿舎
での泊りも可能ということでした。
 私が仕事に出てしまうので、こうきもどこかに行ったほうがよい
かと思ったのですが、あれほど好きだった学校に、
 「行きません」
とかたくなです。
 「ずっと家にいるのはつまらないよ。行ってみる?」
 何度聞いても、
 「家で、ダラダラします!」
と堂々の宣言。
 こたつにもぐってテレビを見たり、昔の写真を見たり、家の中を
ウロウロしたり。
 本当に毎日、妹とダラダラ過ごしています。
 でも、外に出かけないと気が済まなかった頃のことを思うと、一日そんな
風に過ごせるようになったことも成長なのかな・・・。


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